海のまにまに

社会人三年目看護師の青海波の備忘録。転職3回、辞めたい、やる気ない看護師のための生存戦略について書きます。ついったー→@M3TrEpFEYj8F0ac

休職中の手慰み ~推しの本がない~

「推しの本がない」

《注意!》

 ここはヲタク垢ではないのは百も承知なのだが、自分と同じような境遇でないヲタクに強烈な拒絶反応を示してしまった面倒臭いヲタク、否、化物に成り果ててしまった為、このような話題をここで書くことを赦して欲しい。
 ガッツリネタバレもする。コンテンツ名も、キャラの名前も当然出す。
 それを踏まえて、読むか読まないかを、今ここで決めて頂きたい。
 著作権的な問題とか、そういうのがあったら消す。すぐ消す。その時はTwitterにリプでもDMでも言ってくださいお願いします。

 

 

 

 

 

 推しの作品が!地元の本屋に売っていないのである!どこを探しても!全く!

 私の推しは色々居て、Twitterのアイコンの白い人もその一人なのだが、今ハマっているのは『文豪とアルケミスト』の徳田秋声である。
 元々ゲームのリリース直後からプレイしてはいたものの、すぐに飽きて放置してしまっていたのだが、今年のアニメで再燃。職場でのストレスも拍車をかけ、ちょうど不登校の子が逃げ込むように、どんどんこの図書館にハマっていった。
 ゲームの中での徳田秋声の位置付けは、本の世界を侵してくる侵食者に対して最初から一緒に戦ってくれる、いわゆる『チュートリアルキャラ』である。
 彼以外にも、プレイヤーが最初に任意で一人選べる文豪、いわゆる『初期文豪』が四人程いるのだが、彼だけは、最初から、プレイヤーと一緒に戦ってくれるのである。
 常識人で苦労人。他の文豪達に比べて地味なことを気にしており、それ故にひねくれたところがあるものの、基本的に世話焼きで気配り上手。
 当時、クソお局からの攻撃に日々やつれていっていた私が、ハマらない訳がなかった。
 特に散策で、エントランスにいる時に話しかけると発生するあの台詞ーー「おかえり。お菓子が残っているから、食べてくれば?」的なアレーー、に、やられてしまった。
 完璧にオカン……、否、それは言い過ぎかもしれないが、お兄ちゃん……、こちらの挙動に呆れながらも何かと気にかけてくれるお兄ちゃん……。
 最高ではないか。最高ではないか。妹になりたい。娘になりたい。養って欲しい。世話をして欲しい。今すぐ幼女に戻りたい。おぎゃあ。

 思わずしてしまった退行現象は置いておいて。

 そこまで落ちてしまったキャラであれば、もちろん、元ネタであるご本人様の作品も、是非とも読みたいと思ってしまう訳である。というかそれがファンとしてヲタクとして当然の嗜みである。少なくとも私はそう信じている。

 徳田秋声の作品として、まず「あらくれ」を読みたいと思った。Wikipediaで漁り、あらすじを読んだ時、主人公の生き方、その結果と成り行きに興味を持った。周囲から勧められる生き方に反対して、自分で人生を決めていく女性。しかし、それに反して、彼女はどんどん身を持ち崩し、沈んでいく(らしい。読んでないからわからないけれど)。
 あぁ、いいなーー、と思った。三度目の休職中で、ズタボロな女には優しそうな話だと思った。
 過酷で、華やかじゃなくて、ハッピーエンドではないかもしれない。だけど、それでもいいと肯定してくれるような、そんな物語だったらいいなと思った。そういう話を、そういう女性を、きちんと見つめて、書いて、作品にしてくれているのがありがたかった。……、実際に読まなければ、もちろんわからないけれど。

 徳田秋声は、金沢三大文豪である。川端康成からも絶賛されている。
 だから、本屋さんに行って、名作文学コーナーを見れば、すぐに見つかると思った。

 そして、あの嘆きに戻る。

 どこ探してもない!どこ探してもないのだ!徳田秋声が!徳田秋声の作品が!
 地元の本屋も!地元からちょっと離れた、蔵書数の多い都会のでっかい本屋にも!
 ない!ナイ!NAI!Nothing!
 徳田秋声の本が!!!!ない!!!!!!

 元高校の国語教師だった母親には馬鹿にされた。「私だって徳田秋声なんて読んだことなかったもの。中島敦は授業でやったし、泉鏡花は好きで読んでたけど。室生犀星も有名だけど。徳田秋声はねぇ……徳田秋声はねぇ……地味だから」うるさい。

 ここまでないとは思わなかった。地元の、改装された綺麗な図書館ですら、一冊しか置いてなかった。しかも、「あらくれ」でも「黴」でもない。他の文豪も一緒にされた、シリーズ本のうちの一冊である。
 田山花袋はある。国木田独歩はある。島崎藤村は言わずもがな。徳富蘆花と一瞬見間違えた。
 徳田秋声が、徳田秋声だけが、ない。

 悔しいので、普通にAmazonで「あらくれ」を頼んで購入した。古本は嫌だった。だって、推しの本だもん。推しの本なんだもん。
 めちゃくちゃ楽しみである。めちゃくちゃ楽しみである。
 目頭が熱く、口の中がしょっぱくなってきたが、きっとそれは、気のせいだ。